『EcoBino(エコビーノ)によるESCO事業』 株式会社イープラット

<'06 ビジネス部門 環境ビジネス・ベンチャーオープン 敢闘賞受賞>

【概要】

電力消費が大きいといわれている、流通・サービス業のチェーン店舗の省エネを実現する情報システム「EcoBino(エコビーノ)」を活用したESCO事業。対象顧客先と対象環境効果を絞り込んだビジネスプランであり、明快で分かりやすい点が高く評価された。

【受賞者コメント】

エコビーノが敢闘賞を受賞された大きな要因の一つとして、全体の環境負荷を下げるという、ユニークかつ実効性があるシステム、という点があったと思います。トータルで環境負荷を下げていくということをどのように思いついて、これからどのようにしていこうと思っていらっしゃるのか? というあたりをお聞かせください。

まずどのように発想したかということですが、もともとこの会社が2000年4月にできたときは、当時のコンビニ5社(ファミリーマート、サンクス、サークルK、ミニストップ、スリーエフ)が、別々に考えていては、1位のセブン-イレブン、2位のローソンにはなかなか勝てない。ということで、共通インフラを作りそれを5社で共用しようという趣旨で設立されました。私はその当時ファミリーマートの役員だったのですが、命じられてここの社長になりました。
初めのうちは環境とはまったく関係がないEビジネス関連の、コンテンツの企画などをメインでやっていたんです。そんないろいろなことをやっていくうち、2003年にコンビニのエネルギー消費というのは非常に問題だなと気がついたんですね。
なぜ問題かというと、なにしろ店舗数が膨大で、この5社でコンビニ業界のだいたい3分の1を占めるので、それだけで黒四ダム1個分くらいの電力を使っています。
そして京都議定書は守っていかなければいけないので、コンビニの環境負荷についても勉強を始めたところ、店の環境負荷の75%が電力消費だということが分かりました。他の、排ガスやゴミの廃棄の問題と比べても、CO2換算で非常に大きいんです。そこで、まず電力消費を最優先にやるべきだということから始めたんですね。例えばビル管理システムのようなエネルギー循環システムとかです。


それは社長が思いつかれたということですが、その思いつかれたきっかけというのは何でしょうか?

やはりそれは消費電力が黒四1個分だということでゾッとしたということです。電力はある程度コントロールできるものなので、ゴミよりはロジカルに解決できることが多いのではないのか、と思ったのです。
そこでビルのノウハウを店でやってみたら、17,8パーセント削減できたんですね。でもビル管理システムって高いんですよ。
最初やったのは1店舗280万円かかったんですよ。これじゃあ成り立たない、ということで、IT技術を駆使して、3年で120万円まで抑えました。
また、照明、空調、要冷機器などのメーカーさんも自分の領域は努力されていますが、トータルのものはだれもやっていなかったのです。トータルのものをマネージングすることでずいぶん節減ができるのです。
例えば店の外の環境との連動性ですね。照度でいえば、日中は窓から陽が入ってくるのでその間蛍光灯の照度を下げておける。それから、中間期(春秋の時期)は外のほうが気温が低いのに中を冷房していることがあるんですよ。そういう時は循環すればそれで済んでしまいますよね?こういうことは、機器メーカーさんにはなかなかアイデアが浮かばないんですよね。
そういうところに着眼をしたのがよかったのかもしれませんよね。


店舗外のシステムについてはどうお考えですか?

自動販売機などについては未着手ですが、あれは機器メーカーさんがけっこうやっておられて、例えば温かい飲料と冷たい飲料を組み合わせたりして、エネルギー循環を割とうまくやっているように思います。
弊社で取り組んでいる店舗外のシステムというと、街路灯があります。コンビニの駐車場照明から始まったのですが、街路灯は非常に無駄をしているんですね。そもそも街路灯の省エネという発想がないんです。人感センサーをもたせればもっと節約できます。ふつう人感センサーはON・Offなのですが、私どもで開発したのは強弱なんです。
NEDOの助成金で町田市内の電柱5本ほどで実験しましたが、電力使用料が70%ぐらい削減できています。ただ自治体ですので、来年度予算で全部取り換えましょうというわけにはいかず、時間がかかると思います。町田市だけで電柱は22,000本立っているので、それを全部やったら大変な効果なのですが。ただし、電柱は電力会社の料金体系を直してもらわないといけないのです。というのは電柱は1本いくらなんです。電気の消費量は計測していないから減るけれど、電気代は変わらない。経済的メリットはないのです。
この電柱の例でも分かるように、常に計測をして状態把握をしておくというのは基本です。ほとんどの単体省エネの方は計測してそれを記録するというしくみがないようですから。
電力消費というのは気候に依存しますので、去年より電力消費が減ったねといっても、どのくらい減ったか分からないわけです。そういう意味で計測をしてそれを蓄積していくということが、ユーザーが自助努力をする最低限の条件なんです。
その商品が良いっていうから入れました。それだけの話になってしまうんです。計測とその情報蓄積が一番大事だと思います。
IT技術の分野では、いまはユビキタスセンサーネットワークというのが話題ですが、センサーを使って世の中の状況を把握することをすれば、もっといいアプリケーションがたくさんあるわけです。
例えば、米軍の話なんですが、小さなセンサーを戦場にたくさんばらまくわけです。そうして温度や磁気を測って、通信で報告する。そうすると戦車が何台通ったかとか、いろいろ分かるんですね。それはまあ極端なアプリケーションですけど。センスすれば状態把握ができて、また次のことができるということはたくさんあるわけです。
別のアプリケーションで言うと豚の子宮にセンサーをいれて、いつ子どもが生まれるか分かるとか、正確に予測するとかそれによって生産性をあげたり、いいことができるわけですね。
そういうセンシングという技術はいままでは高かったこともあり、普及はしてなかったのですが、私どものコンビニでは30個くらいセンサーをつけていますから、店内・外の温・湿度とか販売ケースの温度を見る、それを蓄積するだけでずいぶん違うわけですね。
いまやっていること自体がセンサーで成り立っているんです。
センサーとコンピューターがなければ全体管理もなかなかできないわけです。センサーが安くなったことと無線機能がついてきたことから、どんどん応用ができると思います。センス&コンピューターとコンビニのノウハウがつながって去年の受賞プランに結びついたこともあるのですが、いまはスーパーのほうにも広がっています。社会全体をセンス&コンピューターで管理できれば、かなり省エネができると思いますよ。