『イモリ谷のわらの家』 末森 憲義

<'09 カルチャー部門 エココミュニケーション 審査員応援賞受賞>

【概要】

納豆屋を営む若いご夫婦からの依頼で設計した「わらの家」。地元で身近な素材「わら」をブロック状にした“わらブロック”を活用し、地域に根差し、日常的に継承できる家づくりの実現を目指した。
主な材料に農業用のわらのブロックを使用することで、一般住宅の5倍の断熱性能を有する住宅を、10分の1の建設費で作ることを実現した。


【受賞者コメント】

受賞作品の制作に取り組んだきっかけをお聞かせください。

今回の作品はeco japan cup用に設計したものではないが、「わらで出来た家」というのものが自然と「エコ」のイメージと重なり、過疎化の進む集落という建設地で、都市部から来た小さな子どもと地元のお年寄りが一緒に笑いながらわら壁に土を塗って仕上げる風景が素敵な「コミュニケーション」であると感じていたので、このコンペにあっていると思い応募した次第です。

今後のエココミュニケーションの可能性についてお聞かせください。

私自身このコンペで初めて「エココミュニケーション」という言葉を目にしたのだが、新しい言葉のわりにあまり言葉に鮮度が感じられないのはどうしてだろう。もっとこれからの概念を指し示す新しい言葉の出現を期待する。 世の中に一人でできないことは山ほどあり、その壁を乗り越えるためには必ずコミュニケーションの力が必要である。エコの分野においてもそうであろう。可能性がなくなることはない。エコに関して強欲なまでに意思を貫く覚悟を持つことが重要か。

受賞の感想をお聞かせください。

光栄である。分野の異なる人の作品と一緒に展示できる機会に恵まれ、新鮮で刺激を受けた。同時に分野を超えて同じ時代を生きる共通の空気のようなものを感じた。また、表彰式は人数の多さに驚いた。そのせいか選んで頂いた審査員の方と話すことができず、心残りとなった。受賞者は審査員と話がしたいというのが至極自然の要望としてあるので、今後ある程度改良された方がよろしいであろう。

今後の作品づくりについての展開をお聞かせください。

幸いなことにわらの家の設計依頼は途切れることがない。現在もいくつか設計している。優れた快適性と圧倒的なローコストを同時に実現でき、完成した家が今までの家にはない新しい魅力を放つためだろう。これからもできる限り頑張って設計し、たくさんのひとに素敵な建物を届けていきたい。