『直販所POS統合型マーケットプレイスの運営』 古瀬 幸広/サトユニ・コモンズ

<'10 ビジネス部門 環境ビジネス・ベンチャーオープン 敢闘賞受賞>

【概要】

 全国に1万3000カ所あると言われる農産物の直販所で使用するPOSシステムから毎日収集した売れ残りデータを、携帯電話やパソコン、ネットテレビ上に表示し、主に飲食店の箱買い注文を前提に売買するバーチャル直売所を運営し、販売仲介を行う。直売所のデータをリアルタイムで集めるマーケットプレイスは現時点で見受けられず、新規事業として期待できる。
 利用するインフラは、直売所の多くで取り入れるPOSシステム。そこで扱われる農産物にはPOSシステム用のバーコードが付けられていて、販売データは農家に提供されている。全国各地の直売所とは提携関係を結んで、POSシステムに送信ユニットを装備すれば、販売サーバー上にPOSデータを統合したマーケットプレイスを構築することができる。ネットテレビからの注文も受け付けて農産物を購入する側の使いやすさを打ち出すことで、購入者はもちろん、提携関係を結ぶ直売所の確保を狙う。
 提案の背景にあるのは、農産物が市場の都合で買い手のもとに届かず大量に破棄されている実態。農家と農産物購入者の直接コミュニケーションに発展する可能性のある場を設けることで、農家にとっての販路を広げる。こうした農業支援は、里山を含めた自然環境の保全や生物多様性の維持、CO2の排出減等に貢献できる可能性があると考えられる。

【受賞者コメント】

 環境ビジネス・ベンチャーオープンへの応募は、人の勧めによるものでした。しかし、応募と選考の過程で、この数年間の思いを整理でき、非常に有意義な体験となりました。
 受賞した「直販所POS統合型マーケットプレイスの運営」は、日本の地方を取材し見聞したさまざまな矛盾を解決できないかと考えたものです。
 地方はマーケットからの要求にがんじがらめになる一方で、「もうひとつの選択肢」(オルタナーティブ)がありません。せっかく作った野菜や果実も、規格外のひとことで捨てられる運命にあります。
 全国に急増している直売所は、それだけでも、地方にオルタナーティブを提供する効果があります。さらにその情報をネットワーク化することで、全国規模で適切な競争を促し、地方経済を活性化することを目標としています。その過程で、里山モデルを整備し、世界に発信したいところです。
 少子高齢化の波は確実に押し寄せており、どの地方も一次産業系は担い手不足に悩んでいます。本提案の現実化の過程で、経営の選択肢を増やし、みんなでこの問題を解決する一助になりたい、と考えています。
 本提案はシステムありきの提案ですが、いきなりシステムだけを開発しても、失敗することが目に見えています。まずはパートナーとなる地方を開拓し、一緒に考えながら一歩一歩進んでいく予定です。