'11  特別企画「エコ復興アワード」

<絆賞受賞>

『損害保険支払認定の迅速対応の取組み』
 社団法人日本損害保険協会

【概要】

東日本大震災では想定を超えた津波により、沿岸地域は多数の死傷者・行方不明者や建物の損壊等大きな被害を受けました。損害保険業界では、震災当日に「大規模地震損害処理体制」の実施を史上初めて決定し、協会本部内に「地震保険中央対策本部」を、協会東北支部内に「現地対策本部」を設置して、保険金支払および被災契約者への対応に万全を期して取組みました。また、会員各社では本社や現地に対策本部を設置し、被災契約者に対する事故受付、保険相談、損害調査、保険金支払等につき迅速かつ的確な対応を行いました。

【受賞者コメント】

受賞された感想をお聞かせください。

今回エコ復興アワードという初めての賞に選出していただいたことを、本当にありがたいと思っております。今回損保業界としてこれほど大きな災害というのは初めての経験でしたけれども、災害の備えの必要性を訴えてきた我々としては、被災者の生活の安定を供給するという、地震保険を通じて社会的使命を遂行するために業界一丸となって取り組んでまいりました。
これが、今回賞をいただいたというのは、関係者一同、本当にありがたいと思っております。

この事業の遂行で一番大変だったことを、お聞かせください。

これだけ広範囲の災害は、我々自身も初めて経験することでした。損害保険は実際に現場を調査してお支払いにつなげるのですが、現場の調査に入るまでに相当期間がかかったことと、非常に広範囲だったのでいかに早くお支払いするかが問題でした。そこで、今までかつてないような取り組みをいろいろやってきたのですが、それらの取り組みを実際にやるにしても、いろいろな関係者の意見を聞きながら、かと言ってゆっくりというわけにはいきませんので、ここでもやはり、どうやって早くやるかということに苦心しました。

3月11日に地震が発生して、その直後に中央対策本部を立ち上げました。あらかじめ計画はありましたが、実際に立ち上げるのは初めてのことで、これも大変でしたが、東京の本部と合せて仙台の現地にも現地対策本部を立ち上げ、すぐに行動を起こしたわけです。それぞれの本部の中では毎日打合せを行い連携し、また本部と現地でも連携していきました。中央対策本部の中には、広報チームや、損害調査チーム、お客様の相談を受ける相談チームなど、全部で8つのチームがありました。

今回初めて行った「航空写真による認定」はかなり苦労されたそうですが、それについてお聞かせください。

当初、航空写真ということで動いたのですが、気象の問題、原発の問題などがあり、また当然のことながら被災地の救助が第一ということもあり、なかなか航空機が思うように飛ばせなかったので、そこで若干時間が経ってしまいました。これは今後の課題ですが、そこで、衛星写真に切り替えて、衛星写真を使って津波で広範囲に流された地域を認定し、そこについては実際の損害調査を省略して全損と認定して一気にお支払いするということにしました。ただ、衛星写真を撮っても、実際のお客様の住所と一致させるのにもかなり苦労しました。

他に、今回初めて行った取組みについて、お聞かせください。

まず、「自己申告の書類による損害認定」ですが、一定の条件はありますが、ひとつひとつ調査していくとどうしても迅速なお支払いができない部分があり、特に原発の避難区域はなかなか入れません。そこで、一時帰宅の時に貴重な時間を使って簡単な書類にチェックをしていただいて、それでまずお支払いをしました。これも、従来はやっていなかったことです。

「共同調査」というのも新しいことで、衛星写真で判定はできるのですが、その際(きわ)の部分はやはり実際に行ってみないとわからないので、そういうところは保険会が共同で調査しました。また今回、津波だけでなく液状化の損害も出たので、これまでケースバイケースで対応していた液状化や津波に対する認定基準をきちんと確認したのも、新しいことです。

また、「相談対応」では、普通だと保険会社に聞いて、そこで分からなければ終わってしまうのですが、今回津波で全て流されてしまって、地震保険をつけていたかもしれないし、つけていてもどこの保険に入っていたか分からないというようなお客様に、どの保険会社の窓口にご相談していただいても、そこで保険会社が連携して必ずお調べをして、契約があった場合には契約保険会社からお客様にご連絡するという照会制度を立ち上げました。窓口を通じて、また準備ができてからはHPからも照会できるようなシステムを、業界横断的に立ち上げたのです。

対策本部は昨年12月に解散されたそうですね。

12月までに1兆2千億円ぐらいのお支払いをして、事故報告の受付に対する調査の完了率も99%ぐらいまで行きました。日々まだ受付は来ている状況ですけれども、かなりの部分完了したということで、中央対策本部は12月15日で解散いたしました。その後は、既存の協会長、それから理事会をトップに委員会がございますので、その委員会が引き続きその課題を受けて対応しています。もちろんお支払いも最後の一件までしっかり行なうということで、今も取り組みは続いております。

今回の貴重な取組みを今後どのように活かしていくのか、展望などをお聞かせください。

今回の取組みはつぶさに記録して、整理をしています。また実際にいろいろな取り組みをしましたが、これに関してお客様から、また関係者からいろいろなご意見をいただいています。地震保険の制度に関するもの、また商品に関する、いわゆるお支払い方法や損害調査の方法についていろいろご意見等頂いておりますので、そういったものも集約して今後の制度あるいは商品の改造に向けたいろいろな検討の場に披露したいと思います。

また地震保険というのは国の制度、法律によって運営していますので、可能であれば私たちも、そういった国での検討の場にいただいたご意見を反映させるとか、あるいは主になって参加させて頂いて、地震保険をよりいいものにしていくように対応していきたいと考えています。

(インタビュー2012年2月13日)



<絆賞受賞>

『計画停電に対応した輪番操業“川口モデル”の取組み』
 川口鋳物工業協同組合

【概要】

住宅地が多い都市部では、企業が夜間操業を行わない協定を地元と結ぶことがある。2011年夏の電力需給対策として、川口鋳物工業協同組合(埼玉県川口市)加盟の大口電力契約をしている夜間操業禁止協定のある鋳造企業は、夜間・土日操業の制限を受ける中グループとなって輪番操業を行い電力削減に努めた。1社では難しい電力制限目標を、グループ化することで可能にするモデルとして注目される。前年比−(マイナス)約30%となる電力削減を実現した。

【受賞コメント】

受賞された感想をお聞かせください。

最初に事務局から連絡をいただいたときには驚きましたし、少し戸惑いましたが、審査員の方々も素晴らしく、大変立派な賞なので、お受けしようと思いました。

受賞された「川口モデル」を実施するにあたって、いちばん大変だったことをお聞かせください。

組合に加盟している各社の意向を聞きながら、輪番の組み合わせを作っていくのが一番大変でした。東京電力から使用できる電力量が示されたのですが、月曜から金曜まで5日操業すると目標がクリアできないので、各社、4勤1休とか3勤2休にして組み合わせることを検討しました。

最初の段階で非常にハードルが高いと思ったので、3勤2休で計画しました。土日はこの計画には含まれませんので、3勤2休でやっても、各社が土日にやれば週に5日間操業ができるのですが、この3勤2休を各社に当てはめていくのが、難しかったですね。例えば、お客さんが木・金に休みの会社は、自分たちも木・金は休みたいとかいうことがあります。また都市部なので、土日できる企業もあるのですが、土曜日しかできないところもあります。各社の意向を汲みながら、非常に苦労して組み合わせを作りました。

「川口モデル」の実施で、かなり効果が出たそうですね。

目標は15%削減だったのですが、30%を達成できました。
理由は2つあると思うのですが、まず、非常に固く組み合わせを作ったんですね。絶対に削減幅が15%以上になるように、少しでも出っ張らないように組み合わせました。それから、もうひとつの理由は、輪番操業実施の前に計画停電があって、各社が、この輪番が始まる前から電力を下げる努力をしていたんですね。おそらくそれが、7~8%の削減になっていると思います。それが輪番と重なって、とてもいい結果が出たのではないかと思っています。

この夏、また電力不足になったら、輪番操業をされますか?

電力が足りないのであれば対応しなければならないですね。昨年は3勤2休で対応したのですが、今度は4勤1休とか7勤2休とか少し違う組み合わせでもやっていけるかなと思っています。

環境問題に対する考え方や、また何か取り組みがあれば、お聞かせください。

鋳造業は3Kと言われる仕事で、ほこりとか騒音とかで社内環境が良くないと言われています。そこで、粉じんに関しては川口市に粉じん測定の補助金を出してもらったりして測定に取り組んでいます。また都市部にあるので、各社、公害対策などを行ったりしています。鋳造業は電力が絶対に必要な仕事ですが、今回の電力制限で電力の使い方を努力工夫して、どこの会社でも1割近くは使用量を下げたと思います。

また組合では、廃砂(はいずな)のリユースに努めています。砂で砂型を作って鉄を流し込むんですが、そのときに砂が産業廃棄物として出ます。昔は全部捨てていたんですが、組合が窓口となって回収し、まとめて路盤材として再活用するようにしています。もちろん、単独でやっている会社もあります。

鋳物は、実はそもそもリサイクル産業なんです。鋳物の原材料は、銑鉄とスクラップで、銑鉄は高炉から出てくるバージンの鉄ですが、それにスティールスクラップを混ぜます。鋳物の不良品などが出ても、溶かせばまた使えます。素材的にリサイクル産業なんです。

(2012年2月13日インタビュー)