『新幹線列島大動脈の夜間物流への活用』 石井幸孝・大矢野栄次

<'11 ポリシー部門 環境ニューディール政策提言 グリーン・ニューディール優秀提言>

【概要】

日本の物流は、長距離においても、道路渋滞、労働環境、環境問題等で課題の多い道路輸送に依存しているが、近々新幹線の列島大動脈(北海道から九州まで)完成を期に、新幹線の使用されていない深夜時間帯を活用して、コンテナー特急を設定し、夜間物流による長距離拠点間輸送の自動車から鉄道へのモーダルシフトを行う。物流の速達・近代化、省エネルギー(夜間余剰電力活用)、省力化、道路渋滞対策、温暖化ガス対策など多角的効果が期待できる。

【受賞コメント】

提言されている問題に、関心をもったきっかけをお聞かせください。

私は長年国鉄やJRの仕事をしてきましたが、今度、新幹線が鹿児島から青森までつながって、ゆくゆくは北海道までつながりますが、日本列島の大動脈となります。そこで、これを契機にやはりもっと有効的な新幹線の使い方をすべきではないか、と考えました。実は、もう数年前からこういう議論をしています。

まず、もったいないことに、新幹線が夜中0時から6時まで全く使われていません。この間の電気代は余剰電力ですよね。それで、そこを活用してコンテナ特急を、九州、関西、関東、東北、北海道と走らせれば、非常に効率的な輸送システムができます。そして何よりも、CO2、温暖化ガスが、今の長距離の自動車輸送では大変たくさん出ています。エネルギー的にも石油燃料をたくさん使うのはもったいないので、そういうものを道路から鉄道にモーダルシフトをしよう、という提言です。

環境問題に非常にメリットがあり、また、震災などがあると広域支援も必要になるわけで、あらゆる点でもうやる時期にきたのではないかと思います。そう思って、今回ポリシー部門で提言させていただきました。

受賞された感想をお聞かせください。

この提言をお聞きになった方は一様に、こんなに素晴らしいことを今まで誰もおっしゃらなかったし、できなかったのは何故ですか、とおっしゃいます。実は私はJRの民営化をやってきた当事者ですから一番よく分かるのですが、今はもうJRは旅客と貨物に分かれてしまい、また旅客も6分割になってしまいましたから、こういう旅客貨物を全国的にやる、かつての国鉄の中枢部のような土俵がないんです。それが最大の問題点です。

今回こんなに評価していただいたのですから、ぜひ国家政策として、調査研究会を立ち上げてほしい。eco japan cupは、環境省、国土交通省、総務省といったところが主催をされているので、日本のために、国の施策としてぜひ取り上げてほしい。そう思っています。

講演会や勉強会でも、昨年あたりから非常に反応があり、今回eco japan cupで優秀提言になったのも、とても納得が行くと多くの方がおっしゃっています。ぜひやるべきではないか、と大変大きなエールが来ています。

今後の活動や展望について、お聞かせください。

ここ10年近くこの問題をやってきているので、いろいろな資料が出来ています。それから実を言うと、東海道新幹線の時にこれをやる予定だったんですが、50年前になりますが、工事費があがってしまったので途中でやめてしまったのです。その設備が今ありますので早急にできます。研究会ではそういうことも含めて相当深度の深い研究・調査ができますし、新たにフィージビリティスタディをするなど、そういうことを、すぐ来年度の仕事としてやらなければいけないと思っています。私たちもそれに向けて全力をつくしますので、まず政府でリーダーシップを発揮していただいて、国の政策として調査研究会を立ち上げてほしいですね。

場合によっては、東京から仙台まで東北新幹線を通る特急コンテナみたいなものを、1,2年後に試験的にやることも可能だと思っています、あまり投資をかけないで。そういうことができますので、政府には本当に早く、実行に向けて大きく土俵を作ってほしいと思います。要するに、JRが分割になったから土俵がないんです。だから今は、土俵無き大相撲のような感じです。今まで国もあまり行司をやらなかったから、行司がない大相撲のようなものですね。政策提言を認めていただいたからには、ぜひ土俵を作っていただいて、政府が行司役になってこれをぜひ推進していただきたい、そう願っています。

(2012年2月13日インタビュー)